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1回戦を競り勝って2回戦へ (1)

 攻撃は単打に犠打を絡めながら小刻みに得点を重ねる。ピッチャーが要所を締め、堅い守備で大きな失点を与えない。試合は予想通りの展開になりました。両チームとも特徴が似ており、実力の伯仲を物語るように同点と逆転を繰り返し、息をつく暇もないゲームになりました。まさに「競り勝つ」とはこのことだと言わんばかりの試合でした。

 開会式と試合を合わせ見ることができる大会初日、関西では「春はセンバツから」との言葉が似合う開幕でした。開会式が終わり、7分間のノックが始まると雰囲気が一変。「静」から「動」へ。大きな声を掛け合い、機敏にボールを追う姿が見られました。「追う、捕る、投げる」の一連の動作が流れるように進み、応援席には期待が膨らみました。
 三重高校の守備で始まった1回の表、審判の「プレイボール」の声にスタンドには緊張感が広がり、誰もがピッチャー三浦くんの投げる球に固唾を呑んで視線を向けました。打者2人を三振で打ち取ったピッチャーの三浦くんの立ち上がりに、我に返ったようにスタンドに歓声が起こったものの、後続の打者に四球を続け1・2塁に走者を背負う展開になりました。しかし、不安を一蹴するかのように持ち前のコントロールで次の打者を三振に打ち取り、それを見た応援席からは「よしっ、その調子や」「大丈夫、いけるよ」の声が飛び交いました。
 1回の裏には石崎くんの左中間を抜く3塁打と岡本くんのセンターへの犠打で先制し、三重高ペースで試合を進められるかと思ったものの、3回表には2点を取られ逆転を許しました。その回の裏にはまたも岡本くんのタイムリー内野安打で同点に追いつきました。その後5回裏にも加点し、勝ち越しましたが、7回表には、またしても同点に追いつかれ3対3に、追いつ抜かれつの展開のまま試合は終盤を迎えました。「試合は僅差で進み、終盤で決まるだろう」との戦前の予想が頭に浮かび、期待と不安を抱えながら8回を迎えました。8回表の守備を無難にこなし、迎えた8回裏、安打を重ねて3点を取った時点で、アルプス席応援席では「よしっ、勝てるぞ」「9回を抑えよう」の声が聞こえました。しかし、甲子園は甘くありませんでした。9回に2点を取られ、なおランナー2人を背負い、一打同点、長打で逆転の場面を迎えました。しかし、ピッチャーの三浦くんが踏ん張りました。最速147kmの速球に切れ味のいいスライダーを織り交ぜ、バッターと真っ向勝負。三振を奪って勝利を勝ち取りました。
 中国地方のチャンピオンチームを相手にして、最後まで気の抜けない展開だっただけに、アルプススタンドに陣取った応援席は興奮が収まらず、歓声と拍手に長く包まれました。腕を振り、大きな声で校歌を歌い、大いに一体感を味わった瞬間でした。

 つなぐバッティングと堅い守りが持ち味のチームが大量6点を取りました。「強豪ひしめく東海の代表は侮れない。三重高校には伝統の強みもある」との言葉を裏付けるような試合でした。終わってみれば3塁打1本、2塁打3本も含め、毎回安打の11安打を放ちました。
 三浦君は140km台の速球と鋭いスライダーで、打者40人から三振8つを奪い、136球で完投しました。3番を打った岡本主将は3安打で3打点、5回裏には内角高めの球をセンターオーバーに運び、8回裏には勝ち越しのホームを踏みました。「自分にはできると信じて振った」と胸を張りました。メンバー18人が一丸となっての試合運びは、沖田監督に「ここまで点を取れると思わなかった。少ない好機をよくものにした」と言わしめる出来栄えでした。

 野球の経験の有無に関わらず、甲子園が特別な場であることは誰もが認めるところです。練習の成果を発揮し、実力を試す場であることは言うまでもなく、選手を支え、応援をする人達と選手が時間と場を共有できる数少ない機会でもあります。お互いの努力に感謝し、相手を敬い、一体感を得られる甲子園での経験は、本校の四大綱「ルールを守る、ベストを尽くす、チームワークを作る、相手に敬意を持つ」に通じるものがあります。
 三重高校は、2回戦で関東代表の浦和学院(埼玉)と対戦します。選手にも応援団にも成長する機会を与えてくれることに感謝して試合に臨みたいと思います。

 1回戦の様子を「1回戦 三重 ― 鳥取城北高校」を3つに分けて紹介します。どうぞご覧下さい。

試合直前、沖田先生がノックします。弾道が芝生
に映えてきれい。
さぁ、試合開始です。 整列! 礼!
球場の全景です。広いです。
初回の1点をたたき出す一打です。
全国の視線が1球に集まります
ピンチになると応援団が観客を鼓舞します。
大きなタオルを一斉に振って応援しました。
センター側からはこんなふうに見えます。
応援席を上から見るとこんな感じです。
野手の緊張感がわかるでしょ。
三重高等学校
2012/03/23

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